アバ茶道具記 ~「アバ茶好み」の茶道具記
「そうだ!茶道具記を作ろう」
過去を振り返ると名物の茶道具をまとめた「大正名器鑑」など、その時代にどのような茶道具が使われていたのか?流行っていたのかを知ることのできる「茶道具記」があります。また、その時代ごとに生み出された新たな茶道具もたくさんあります。
元祖「アバ茶好み」は太陽系惑星茶碗「宇宙十職」
2009年にアバンギャルド茶会を立ち上げて、2010年に「宇宙十職」という太陽系の惑星をモチーフにした宇宙茶碗を作ってもらいました。これが「アバ茶好み」のスタートです。
当時は、「茶碗ってオーダーできるの?」「どうやって注文したらいいの}「そもそも、いくらするの!?」と手探り状態。さらに「近藤って?アバ茶って誰やねん?」だったのに「面白そう!」というだけで付き合ってくれた陶芸家には今でも感謝です。(この企画をきっかけに多くの陶芸家と知り合い、その方々がその後のアバ茶好みを支えてくれています。)
これで完全に味をしめてしまい、さらにエスカレートしていきます。。。笑
でも、新しい茶道具を作るときに心がけているのは、一方的にお願いするのではなく、一緒に作ることです。工房に伺って対話をしながら、お願いしたい作品への想いや細かい仕様について話し合います。Facebookやメールで何往復もやり取りを重ね、想いとストーリーが詰まった茶道具をこれまでにいくつも作っていただきました。
現代の茶道具記を残す「アバ茶道具記」
「好み」の元祖といえば、好みの茶道具を数多く残した名プロデューサー「千利休」です。(【茶の湯コラム Vol.2】茶人は、日本文化の「総合プロデューサー」? ~千利休が現代に生きていたら何をするか?)利休好みの茶道具の筆頭格にあげらるのが「楽茶碗」です。
「長次郎」という瓦職人を見出し、細かい指導?やり取りの末に生まれたのが「黒楽茶碗」です。(「長次郎」を初代とする「樂家」が現在も千家好み(千家十職)の茶碗師です)
それまで「唐物」と呼ばれる中国や朝鮮から渡来してきた茶道具が一級とされてきたところに、利休は「これからはMade in Japanでしょ!」と言って、自分で新しい茶道具をプロデュースしてしまったわけです。まさにアバンギャルド!笑
というストーリーを利休が直接語っているものは残っていません。ほとんどが側近による見聞をまとめたものです。
その中でも利休の側近だった「山上宗二」が利休から直接話しを聞いて書き残した茶道具記「山上宗二」は、利休の時代にどのような茶道具が珍重されていたのかを知る貴重な文献です。(ですが、その内容の解釈も未だに定まっていません。)
利休と比べるなんておこがましいですが、これまで何人かの作家と作り上げてきた愛すべき「茶道具」をただ使うだけではなく、自分の言葉でそのストーリーを語っておきたいという想いから「アバ茶道具記」をまとめてみようと思います。
(中には本当に個人的な想いで作っていただいた茶道具もありますので、そのあたりはご容赦ください。笑)
アバ茶道具記
【Vol.1】移動茶室「丿庵」のための金銀ペア茶碗
【Vol.2】篠原さんは、男前な茶碗を作るべき!というお節介から生まれた茶碗?
【Vol.3】大事な茶道具の持ち運びにも大活躍!ドリッピング色紙箱
【Vol.4】中国 南宋時代の技法を今に!かすれた感じが萌えポイント/釉裏紅丸壺茶入
アバ茶好み道具 一覧(2018年5月現在)
◼️茶碗
刻ム音茶碗 金・銀(沼野秀章)
信楽引出茶碗 銘「気層」(篠原希)
益子青磁茶碗(二階堂明弘)
夜明け前(沼野秀章)
朝焼け(沼野秀章)
組香茶碗(沼野秀章)
釉裏紅茶碗 京みやび(潮桂子)
◼️茶入
釉裏紅丸壷茶入(潮桂子)
志野肩衝茶入(沼野秀章)
エフゴ茶入(菱田賢治)
紫志野筒茶器(鈴木伸治、河村寿昌)
◼️茶杓
惑星茶杓(菱田賢治)
銅打ち出し茶杓(宮田琴)
白竹茶杓 銘:却来(近藤俊太郎)
シミ竹茶杓 銘:ひねくれ者(近藤俊太郎)
ビーカー共筒(河村寿昌)
◼️棗
宇宙棗(菱田賢治)
レッドウッド棗(河村寿昌)
錫大棗(菱田賢治)
地粉黒大棗(菱田賢治)
◼️菓子器
宇宙十職 木星菓子器(沼野秀章)
オーバル曲げ干菓子器(小林克久)
◼️掛軸
相対性理論(石川徳仁)
◼️花入
竹一重切り花入「」(近藤俊太郎)
竹掛け花入「尺八」(近藤俊太郎)
宇宙十職 金星花入(ワクイアキラ)
◼️建水
漆桶建水(菱田賢治)
朝鮮唐津(穂高隆児)
宇宙十職 海王星建水(佐藤典克)
丸壷建水(沼野秀章)
◼️水指
朝鮮唐津水指(穂高隆児)
信楽引き出し水指(篠原希)
刻ム音水指(沼野秀章)
◼️香合
宇宙十職 火星香合(潮桂子)
信楽焼締香合(近藤俊太郎)
銘木香合 銘「栗坊主」(河村寿昌)
◼️その他
ドリッピング色紙箱(近藤俊太郎)
栗材塗り長板(菱田賢治)
参考情報
大正名器鑑
戦前の茶人 高橋箒庵(そうあん)が編纂した歴代の名物「茶道具」をまとめた全9編13冊の茶道具カタログ集。国立国会図書館デジタルコレクションで見ることもできます。